【給与所得者様向け】積み立てで資産形成をスタートしよう
前回のblogに書いた通り、「おかねは使いながら貯めましょう」というのが、私の提言です。
そして貯蓄の王道が「積み立て」です。
積み立てを始める前に、毎月の収支を整理しておきましょう。
ウォレットプラスのような収支管理アプリを利用することがお勧めです。毎月の収入と支出が整理されて確認できるので積み立てに回せる金額(収支余力)がどこ程度あるのか簡単に確認できます。毎月赤字の方はまず黒字化するのが先決。給与所得者である以上、収入を増加させることは容易ではないため、支出側の見直しをしてみてください。家賃やスマホ代、サブスクや交際費等などを見直すことで多くの場合は黒字化できるはずです。
①投資で運用
毎月積み立てできる金額の見立てがたったら早速始めてみましょう。まず思いつくのが「積み立て定期預金」という方は多いのではないでしょうか。ただし、みずほ銀行のホームページを覗いてみたところ、運用利率は0.002%です。魅力を感じられるでしょうか??できることならもう少し年率を高めたいものです。運用には複利効果(元金に加え、受け取った収益を元手に運用していくこと)が期待できるため、年率が数パーセント異なるだけで、将来的の受け取り金額は大きく変わるのです。
金融庁のHPから運用シミュレーションを取ることができます。
毎月1万円の積み立てを20年間行ったときのシミュレーションです。
積み立て定期を想定し0.002%の運用を行った場合、20年後の積み立て金額は2,400,478円。つまり、元本割れのリスクはゼロかもしれませんが、20年間で受け取れる利息はたった478円です。
一方、投資信託などの投資商品を想定し、3.6%での利回りで運用できたと仮定した場合の20年後の積み立て金額は3,507,400円。20年間での受け取り利息額は1,507,400円です。
確かに一定のリスクは伴いますが、非常に魅力的だと感じませんか?
ちなみに、この3.6%というのは国際通貨基金(IMF)が発表している世界の実質GDP成長率です。特に知恵を使わなくても、世界にバランス良く分散投資すればベースとしてこれだけの成長が見込まれるということです。この想定利回りは十分に実現可能なものでしょう。
「よし、多少のリスクがあれど毎月定額で投資商品を購入しよう!」と決断された方。さらにここでメリットが発生します。ドルコスト平均法の利用に伴うメリットです。
ドルコスト平均法とは…資金を分割して購入する場合、一度に購入せず均等額を定期的に継続して投資すること。こうすることで、相場が安い時にたくさん購入し、相場が高い時には少ししか購入しないいという投資手法が継続されます。時間を分散して投資することで、長期的に右肩上がりの投資銘柄であれば、利回りを好転させる効果が期待できます。
詳細は以下のリンクを参照にして下さい。
さて、期待値が高まってきたところで、いよいよどのような投資型商品を利用していくのが良いか検討してみます。
(1)投資信託で運用
王道はNISA口座を活用した投資信託です。投資信託とは、一言で言えば投資家から集めたお金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資かそれぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品のことを言います。
世界か日本か、株式か債券か現物か、どのような業態かなどを選択することで、投資から集めた資金で個別銘柄をプロが選定し運用してくれるため、投資信託を購入することで一定の分散投資がされることとなります。株式ほど価格変動が大きくないため、長期の資産形成には非常に向いているでしょう。
注意点としては、運用成績は市場環境などによって変動するため預金などと異なり元本が保証された金融商品ではないこと、販売会社に対する「購入時手数料」や運用中は間接的に信託財産から「信託報酬」といった手数料が差し引かれることなどがあります。
(2)ロボアドを利用する
THEOプラスやウェルスナビと言ったロボアドを活用することもお勧めです。AIが資産状況を踏まえた上で、世界中の株式・債券・現物資産にバランス良く投資を行ってくれます。
AI運用は長期資産形成において非常に親和性が高いです。長期投資のコツは「今が買い」などと行った私的感情を極力挟まないことです。AIはこの私情を完全に排除してくれるからです。全世界がこれまで通りインフレ傾向に緩やかに経済成長し続けて際いれば、概ね成功するでしょう。
(3)株で運用する
最近は少額の株式投資もできるようになりましたが、資産形成と言った観点からはお勧めしません。価格変動が大きく、リスクが高いためです。株式は基本的に購入者の目線でマーケットを分析・個別企業を判断しながら短期的に売買を行っていくものであり、そもそも長期投資には向きません。株式への投資は仮に0になってしまっても構わない覚悟を持って余力資金で行いましょう。
②ドル建終身保険
もう一つお勧めなのが、ドル建の終身保険での資産形成です。その名の通り、保険料や解約返戻金がドル建てで計算される終身保険で、資産運用や相続対策、学資保険の代わりなどとしてこの低金利時代に人気の商品となっています。これまで述べてきた投資と大きく異なる点は、あくまで終身保険のため、積み立てを開始した段階で死亡保障が立ち上がることです。まだ小さなお子様の見えるようなご家庭は万が一の際の備えとしても非常に有効です。
〈外貨建て保険のメリット・デメリット〉
(1)メリット
投資として
・円よりも金利が良く貯蓄性が高いこと
・通貨分散することで円の価値が下がるインフレ対策に有効であること
・円安の時に解約すると為替さえきで通常の利息以上の大幅なプラスになる可能性があること
保険として
・生命保険料控除の対象となり節税効果があること
・加入者が万一の時は死亡保険金を受け取れること
・死亡保険金の非課税枠(法定相続人×500万円)が適用されること
・病気で重い状態などの場合にそれ以降の保険料の払い込みが免除されるケースがあること(※契約・商品による)
(2)デメリット
・保険であることから早期での解約は元本割れをすること
・円換算の保険料(支払う保険料)が毎月為替相場によって変動すること(支払保険料がドルで設定されている場合)
・円での支払いや受け取りに為替手数料がかかること
・為替リスクによって元本割れする可能性があること(最後まで払い込めば元本割れしないというのはあくまでドルを基準に考えた場合)
(3)デメリットを補完するには
・解約時期は自分で決めることができるため、円安になるまで待つことで元本割れを回避できる
〈外貨建て保険が向いている人・向いていない人〉
(1)外貨建て保険が向いている人
・長期の資産形成を主目的としており、早期解約の予定がない人
・自身の死亡や高度障害に対するリスクにも備えたい人
・保険による税制上のメリットを享受したい人
(2)外貨建て保険が向いていない人
・早期解約の可能性がある人
・学資保険として活用する場合など、必ずこの時期に円転すると行った必要がある人
・円、預金至上主義でリスクが取れない人
具体的な商品設計が伝わるよう、代表的な2商品についてリンクを貼っておきます。
外貨建て保険については、保険としての一定のメリットを享受しながら、あくまでも投資として活用するものと考えた方が無難です。早期での解約は当然元本割れしますので、あくまで長期運用できる人が基本となります。円建てでは実現できない投資商品になりますので、メリット・デメリットをしっかり把握して、自分の資金の利用目的などと照らし合わせながら活用するのが良いでしょう。
③まとめ
「毎月コツコツ積み立てて資産形成」をテーマに投資による方法と外貨建て保険による方法の2つを紹介させていただきました。
それぞれ特徴がありますので、ご家庭の状況に合わせてご利用頂くと宜しいかと思います。
それではハッピーなマネーライフを。
【思考】おかねは使うべき?貯めるべき?
最近、話題となることが多いのが標記のテーマです。
尊敬する堀江貴文氏などは「あり金は全部使えー貯めるほど貧しくなるー」などと言った刺激的なタイトルの書籍も出版されて見えますが、お金を通じて多くの人と関わりあってきた銀行員としてこのテーマについて意見したく、今日はブログを書きたいと思います。
1.おかねは使うべき?貯めるべき?
私の答えは、
「投資となるおかねは迷わず使うべき。一方、消費となるおかねの利用は控え、貯蓄に回すべき。」
です。
つまり、使うべきだし貯めるべきという少し卑怯な回答になってしまっていますが、間違いなくおかねを使うこと・貯めることどちらも大切であるからこのような回答になるのです。
「使いながら貯めるなんて、普通のサラリーマンにはできないでしょ。」という貴方。決して難しいことではありません。大切なのはおかねの使い方です。以下でもう少し詳しく説明します。
2.メリットのあるおかねの使い方
以下に示すようなものが、私の考える「投資」にあたります。長い目線で考えた時に必ず自分にプラスとなって返ってくるものです。
①自己投資
代表的なのは読書や勉強、美容などです。学習の分野で言えば、かつてはかなりコストがかかるものでしたが、インターネット・スマホの普及とともに、いつ何時誰でも費用をかけずとも学べる環境が整いつつあります。その上で、自身が強い関心を持ち血肉となるものについては惜しみなく投資すべきと考えます。
②健康
勝間和代さんが以前こんなことを話して見えました。
「おかねに関して言えば、極論日本はセーフティーネットがあるから国が補償してくれる。でも、健康と人間関係は誰も補償してくれない。」
この言葉非常に刺さりました。健康は失ってしまったら最期。国が最低限の補償をするなんてことはできないのです。
また、健康であることはあらゆる側面におけるパフォーマンスの質に直結します。予防医療に対する投資は非常に価値のあるものでしょう。
ただ、これについてもレベルの差はあれそれほどコストをかけることなる取り組めるものだと思います。ジョギングやウォーキングであればゼロコストですし、月額のジム代やサプリメント等への費用程度であれば大きな負担にはなりません。食の健康を考えた場合はむしろコストカットにつながるケースも多いでしょう。
③他人への感謝・愛情を示す支出
歳を重ねてきて分かったことですが、人間の価値は周りの人や大切な人をどれだけ幸せな気持ちにできるかで決まると思います。そして、相手に対する投資は間違いなく自分に返ってきます。そう言った意味で、身近な大切な人に支出する費用を惜しむべきではありません。
とはいえ、他人への感謝・愛情を示すことにおいて大切なのはきちんとその思いを伝えることが大切であり、多くの場合そこまで大きな支出を必要とするものではないものだと思います。
④テクノロジー
ご存知の通り、近時の技術革新は目まぐるしく、時代の先を行く最先端の技術に投資し直接触れることは非常に大切です。しかし、これは非常におかねを必要とするものなので、厳選して投資を行っていく必要があります。投資対象の選定において私が大切にしているのは、
⑴利用頻度が高いこと(仮に投資価格が大きくても利用時間当たりの単価は低いため)
⑵多くの人の目に触れる機会が多いこと(新しいテクノロジーに関心が高いことを相手にアピールできるため)
⑶進化が目まぐるしいもの(数年前のモデルはダサい)
この基準で選定した場合、圧倒的にハマる商品が1つ。それは御察しの通りかと思いますがスマホです。個人的にスマホの購入は最高峰の最新モデル1択だと思います。
3.メリットの無いおかねの使い方
一方でメリットがないのが「消費」です。
①見栄
一番厄介なのがこれ。本来必要とする以上に大きな家を持ち、燃費効率の悪い大きな車に乗り、ブランド品を買い漁る。本当はさして味の違いもわからないのに、インスタ映えのために高級食を食べる。シーズンごとに次から次へと高級服を買い換えるなど。
土地持ちで大きな家に住む人が偉いといった価値観は、明治時代の地租改正以降の話ですが、もう終焉したと言っても過言ではありません。SDGsやカーボンニュートラルがキーワードになる中、「かっこいい」の定義が変わっていることに早く気づくべきでしょう。力量以上に消費して、前述したような見栄を張っている人間はダサい。このことについて多くを語る必要はないでしょう。
この見栄を捨てると間違いなく一気に貯蓄性が増します。
②健康を脅かすもの
酒やタバコが代表的です。クラブなどで夜遊びをして過度に睡眠時間を削るなどと言った行為も好ましくないでしょう。完全に無くす必要はないと思いますが、嗜み程度がベストだと思います。
私の好きな言葉に「Less is more(少ない方が豊かである)」という言葉があります。もともとはミス・ファン・デル・ローエという建築家が残した言葉ですが、実体験から申しますと厳選した非常に大切なものだけに囲まれた生活は非常に快適です。本当に大切にしたいことに集中できる。そして本当に必要なものだけに厳選していくと、ほとんどのものが要らないことに気がつきます。購入するとき不必要な消費になっていないか、自問することをお勧めします。
4.おかねを貯めるメリット
貯蓄は保守的で無意味なものではありません。精神衛生上、非常にその効果は大きいです。
①自信になる
資産を積み上げることは自信を生みます。これまで貯蓄と無縁だった方は是非チャレンジして欲しいです。
一般的なサラリーマンの方であれば、まず1,000万円を目標にするのが良いと思います。おかねのことをよく学び、積み上げていけば誰でも達成可能な金額だからです。
当サイトでは、その一助となるような価値のある情報を提供していく予定ですので、是非ご覧いただければと思います。
②精神的自由度を高める
貯蓄の最大のメリットは間違いなくこれ。投資する側のメリットを含めても圧倒的にメリットが大きいためやはり貯蓄はせざるを得ない。
例えばですが、どうしても納得がいかず組織や上司の意見に反して意見具申したい時、貯蓄0の給与所得者で家族を扶養しているような状況であれば、ほぼ間違いなく自分の意見など押し殺して組織に従うでしょう。いわゆる、社畜としての人生が決定します。一方、貯蓄が仮に1,000万円持っている状況であれば異なります。マインド的には「仮にこれでクビになったとしてもしばらくは食っていける。その間にまたスキルを身につけて稼げば良い。」と言った余裕が出てくることから勝負に出れる。
この日々のマインドの違いは圧倒的な差を生み出します。常に勝負に出れる状態のマインドの人間はあらゆる局面でチャンスが得られ、日々の心理的ストレスも小さい。一方で、貯蓄0の人は基本的に自分の意思を失い、生かされる人生になります。これは非常に辛い。
もちろん例外もあると思いますが、大多数の人に当てはまる話だと思います。だから貯金をしないといけないと言っても過言ではありません。
5.そしてもう一つ重要なこと
おかねを投資として使うことにおいて間違いなく言えることは、若い時ほどその投資効果が大きいということです。
投資にはレバレッジがかかります。若い頃自己投資を惜しまず出世した人は、早くから大きな仕事を経験することができるかもしれません。その経験を得た人はさらにレベルの高い仕事ができると言った形です。
健康への投資もそうでしょう。若い頃その投資を惜しみ、からだを壊してから取り戻そうとしても多大なコストがかかります。
若い時に大好きな人を口説くためであれば、それに対する支出を惜しむべきではないでしょう。歳をとってから取り返すことはできません。その投資1つで大きく人生が左右することはあります。
若い人は積極的に投資です。精神的自由度を高める必要もまだ無い。若ければ、独身であるならばさらに正直どうにでもなる。貯蓄はあくまで余力として考えましょう。
6.最後に
ここまでご購読いただきありがとうございました。
投資も貯蓄(資産形成)もどちらも大切であることがご理解いただけたかと思います。
次回は積み立てを活用し、長期的目線で資産形成を行っていく方法について考えたいと思いますので、お目通しいただければ幸いです。
それではハッピーなマネーライフを。
【給与所得者様向け】給与明細から世の中の仕組みを学んでみよう
サラリーマンの皆様、日々お勤めお疲れ様です。
ところでサラリーマンにとって最も大事なお給料の明細。中身をきちんと確認したことはありますか?
日々の業務が繁忙で、週末は家族サービスに追われて…貴重な自由な時間を使って小難しいおかねの話など考えたくない。そんな人も多いのではないでしょうか。
このBlogを覗いて頂けたのも何かの運命。自分の働いて得たおかねが何に使われているのか、これを読んで是非一度理解してみてください。日本の社会保障制度がよく分かるようになると思います。
1.給与明細には何が記載されているのか
給与明細とは、給与の支給額や控除額といった給与の計算根拠を表示した書類のことです
法令上の義務として会社は従業員に対し給与明細を発行する義務を負っており、その中には3つのことが記載されています。
(1)支給額
支給額は「額面」と呼ばれるもので、基本給や残業代、住宅手当や通勤手当、役職手当など会社で規定されている各種手当を合算した金額です。一般的に年収と言われるのは、この支給額の合計額(ボーナス等をこれに加算した金額)のことを言います。
自分のお通帳に振り込まれる金額よりもかなり大きな金額になっているのではないでしょうか?実際にはこの金額を企業は負担しているということになります。
(2)控除額
控除額に該当するものは、以下の通りです。
・健康保険(基本・特定)
・介護保険
・厚生年金
・労働保険
・所得税
・住民税
・その他会社ごとの控除(持ち株拠出金、組合費、団体扱い生命保険等)
社会保険や労働保険、税金に関するものがメインとなります。多くの方は小難しくてよく分からないというのが正直なところでしょう。
(3)差引支給額
差引合計額とは、いわゆる手取り。つまり実際に受け取る金額のことで、「(1)支給額−(2)控除額」を指します。尚、労働基準法第24条では、「賃金は、通貨で、直接労働者にその全額を支払わなければならない」と定められています。銀行振込は労働基準法第24条但し書きにより、特別に認められています。
2.何が控除されてるの?
給与明細の中で最も分かりにくく、かつ世の中の仕組みを理解する上で重要なのが控除額の中身です。なぜこれだけの金額が差し引かれるのか?一体何に使われているのか?その使い道は大きくは社会保険、労働保険、税金、その他の4つに分類できます。
(1)社会保険
①医療保険
サラリーマンの方における医療保険制度とは健康保険(自営業者の方は国民健康保険)のことを指します。 そして雇用主が法人の場合は原則として強制加入することになっております。
健康保険は、業務外の病気やケガなどを保証する制度です。疾病負傷時に一部負担金のみ(2割or3割)で診察・投薬や手術・入院が受けられることはご存知かと思いますが、それ以外にも高額療養費制度や傷害手当金、出産時における一時金や手当金、死亡時における埋葬料も健康保険によるものであります。詳細の内容については全国健康保険協会(主に中小企業の方が加入)のHPを添付致しましたのでご参照下さい。
保険料は「標準報酬月額及び標準賞与額×健康保険料率」となります。
※健康保険料率は、中小企業が主に加入する協会けんぽについては都道府県単位で保険料率が適用されます(10%前後)。大企業が加入する組合健保については3.0〜13.0%の中で健康保険組合が自主的に決定しています。
※一般保険料率は基本保険料率と特定保険料率から成り立っており、特定保険料率とは前期高齢者支援金、後期高齢者支援金、退職者給付拠出金及び病床転換支援金等に充てられるものであります。
尚、保険料は労使折半(事業主と被保険者が折半して負担)のため、上記金額の約半分が給与から控除されることとなります。
また余談ではありますが、健康保険制度は74歳までで75歳になると健康保険から脱退し、すべての人が後期高齢者医療制度の被保険者となります(財源については概ね医療保険4割・公費5割で賄われています)。
②介護保険
介護保険は、高齢で介護が必要となった場合の費用に備えるための公的な保険制度を言います。介護保険料を負担する代わりに、介護保険に加入している人は要介護認定を受けると1割(所得によっては2割・3割)で所定の介護保険サービスを受けることができるものです。
65歳以上を第1号被保険者、40歳以上65歳未満の医療保険加入者を第2号被保険者と区分。39歳までは未加入期間であり、保険料はかかりません。保険料については第2号被保険者は、各医療保険者がそれぞれの医療保険料に上乗せして徴収。「標準報酬月額及び標準賞与額×介護保険料率」となります。
※協会けんぽの場合、保険料率は1.80%(令和3年4月時点)となっております。
尚、介護保険料についても労使折半のため、自己負担額は上記金額の約半分となります。
余談になりますが、介護保険の財源は介護保険料で約50%を確保し、残りについては国と都道府県、市区町村からの公費で賄われます。市区町村が保険者となり、介護サービス事業者からの請求により自己負担部分以外の費用(7割〜9割)が支払われます。
③年金保険
年金保険の天引きは老齢時の公的年金受給のイメージが強いかと思いますが、老齢、障害、死亡の3種類の備えとなっております。受給事由に応じ、それぞれ一定要件を満たした時に支給されることとなっています。
・老齢給付→支給開始年齢に達した場合(老齢基礎年金・老齢厚生年金)
・障害給付→病気や怪我によって障害が残った場合(障害基礎年金・障害厚生年金)
・遺族給付→被保険者が亡くなった時、生計維持されていた遺族がいる場合(遺族基礎年金・遺族厚生年金)
尚、現在日本の年金制度は4階建てと言われております。1階部分が国民年金で、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎年金。会社員や公務員などは2階部分が厚生年金保険となっており、この部分についても国が強制的に行う公的年金部分に該当します。3階部分は企業年金と言われ、様々なものから企業が任意で導入しています。具体的には、厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金(企業型)などが該当します。4階部分はどの立場の者も加入できる、生命保険会社や損害保険会社などが行う個人年金となります。ナビナビ保険さんの図解が分かりやすかったのでリンクを添付しておきます。
肝心の保険料ですが、第2号被保険者は給料と賞与から厚生年金保険料が天引きされます。尚、国民年金の保険料は厚生年金保険から一括して拠出されているため、厚生年金保険の保険料以外に負担する必要はなく、国民年金としての個人的な納付は不要となっています。
厚生年金保険料は「標準報酬月額及び標準賞与額×18.30%(2017年9月〜)」となっており、これを労使折半にて負担します。
(2)労働保険
広義の意味での社会保険に該当しますが、労働保険も天引き項目の一つに挙げられます。労働保険には労働者災害補償保険(労災)と雇用保険の2つがあります。
・労働者災害保険(労災)→労働者を使用するすべての事業者が強制加入。正社員はもちろん、アルバイトやパートタイマー、外国人労働者などすべての労働者が対象となる。業務上及び通勤途上における病気、怪我、障害、死亡などが給付事由となる。業務災害については業務遂行性と業務起因性の両方の要件を満たしたときに認められる。
※業務遂行性とは、労働者が労働契約に基づき、事業者の支配下にあることを指す
※業務起因性とは、労働者が従事している業務やその業務に付帯するこうちが原因で事故が発生し、その事故によって傷病にかかったことを言う
・雇用保険→給付の中心は、失業者給付である。そのほか、早期に就職した場合の就職促進給付うや、失業を防ぐ教育訓練給付、雇用を継続するための雇用継続給付がある。
労働保険料は、労働者に支払賃金総額に保険料率(労災保険率+雇用保険率(一般の事業の場合0.9%))をかけた金額となります。労災保険部分については全額事業主負担。雇用保険については自己負担部分は0.3%・事業主負担部分は0.6%となります。
(3)税金
①所得税
一般的なサラリーマンは源泉徴収により所得税(国税)を納税します。
納付金額は国税庁が発行する源泉徴収税額表に基づき、社会保険料等控除後の給与等の金額や扶養親族等の数により決定されされます。
しかし、徴収された税額の年間合計額は、1年間の給与収入について納めなければならない税額(年税額)と一致しません。これは扶養控除等の認識時期の違いや、生命保険料控除等が年末調整でしか反映されないことが原因で、このような不一致を年末調整で精算することになります。
②住民税(個人住民税)
住民税は市町村民税と道府県民税に分かれています。所得によって納税額に差がある所得割額と同じ自治体に住む納税者が同額を納税する均等割額の合計額が個人住民税の納付額となります。算出方法は少し複雑なためここでは割愛します。
ふるさと納税を活用すると所得税及び住民税が控除できますので、こちらについては改めて別の機会を設けて確認していきたいと思います。
(4)その他会社ごとの控除
①組合費
所属する企業に従業員組合がある場合は、一般的に活動費用として組合費が控除されます。
②生命保険
所属する企業で団体割引を適用した生命保険に加入している場合、月額が直接控除されます。
3.事業主負担分って何?
給与明細には支出と控除以外に、事業主負担分が記載されていることがあります。これは所得の計算上直接関係してくるものではありませんが、一個人に対し実質的に企業が負担している費用部分と言えます。つまり、「支給金額に加え事業主負担分まであなたに対して給与を支払っているのですよ」といったメッセージとも捉えられるでしょう。
その中で年金制度の3階部分にあたる企業年金がここに該当してきますが、企業が任意で導入していることからその内容はまちまちとなります。以下、その一例を紹介します。
(1)確定給付企業年金(DB)
従業員が受け取る「給付額」があらかじめ約束されている企業年金制度です。会社が運用の責任を負い、運用結果が悪ければ、企業が不足分を穴埋めします。現在、最も普及している制度でもあります。当人分の企業年金として記載の金額が運用されていることを意味します。
(2)確定拠出年金(企業型DC)
企業が掛金を毎月積み立て(拠出)し、従業員(加入者)が自ら年金資産の運用を行う制度です。従業員は掛金を元に、金融商品の選択や資産配分の決定など様々な運用を行います。そして定年退職を迎えた際、積み立ててきた年金資産を一時金(退職金)、もしくは年金の形式で受け取ります。ただし、積み立てた年金資産は原則定年まで引き出すことはできません。こちらも当人に拠出されている金額が記載されています。
(3)労働保険
前述の通り、労災保険部分については全額事業主負担。雇用保険については自己負担部分は0.3%・事業主負担部分は0.6%となるため、事業主負担部分がここに記載されます。
(4)健康保険・厚生年金
これも前述の通り、健康保険と厚生年金については労使折半のため、企業側で負担する金額がここに記載されます。
最後までご購読頂きありがとうございました。
さあ、今日は一度給与明細を持ち帰ってじっくりと眺めて見てはいかがでしょうか?
自己負担部分の多くが社会保証制度のために利用され、いざという時の備えとなっていること。また、その多くの部分を会社が負担してくれているという理解につながった方は多いのではないでしょうか。
きっと、会社に対する感謝の気持ちが増し、明日から一層業務に邁進することができることでしょう。
では、ハッピーなマネーライフを。